Your focus determines your reality.

思ったことや新たに知ったことのメモとして。元々は留学中に考えていたことを記したブログでした。

2019春学期振り返り

今週は授業はなく、水曜日にLab to Market(L2M)のプレゼンとCreativityの期末試験、木曜日にFinancial Statement Analysisの最終レポートを提出し、これでMBAの全てのカリキュラムが終了した。

最後の週まで盛りだくさんで、MBAライフの良い締めくくりになった。

 

MBA最後の学期は授業を3つに減らし、L2Mに時間を充てるという作戦だったが、結果的にはL2M以外の2つの授業の負荷が想像以上にかなり重く、授業を減らしたことが幸いするという結果になった。

ただL2Mでは後悔なくやりきることができたし、結果としての評価も付いてきた。またそのプロセスではグループメンバーとの議論や、自分の責務を全うするのに足りていない知識の補強などにも時間を割くことができ、実際にシード技術をビジネス化していく初期段階を自分の手で動かすという満足のいく経験を得ることができた。

 

Lab to Market

1年生の春学期、2年生の冬学期に続く事業立案演習の第3部。

これまでも書いてきた通りだが、先学期から引き続き、機械学習を活用した新たな血液検査技術をビジネス化するというプロジェクトに取り組んできた。

市場調査やラフな事業計画を通して事業魅力度を測った先学期に対して、今学期はより詳細な事業計画を作成し、初期段階でどのように市場に入っていくか(Go-to-Market戦略)の策定や、それに基づいたより詳細な事業計画、資金調達計画を作成するという内容であった。

 

結果としては全体のトップ3に選ばれたとともに、今週行った最後のプレゼンでは投資家から「投資したいんだけどこの事業は今後サンフランシスコが拠点になっちゃうんだよね」という反応を引き出すことができ(その後は継続して事業化を進めるメンバーによって投資交渉が続くことになりそう)、自分たちが半年で出せる最高の結果を出すことができたと思っている。

 

この授業から得たものを文字にまとめるのは難しい(というかまとめると小さくまとまってしまう)のだが、大まかに言うと

「未経験の分野での事業開発におけるモヤモヤ・ゴタゴタに耐えて、前に進む力」

「異なるバックグラウンドをもつチームで協力してグループダイナミクスを生む力」

「事業化の中で必要になる検討事項を整理し、優先順位をつけながら取り組む力」

になると思っている。

 

「未経験の分野での事業開発におけるモヤモヤ・ゴタゴタに耐えて、前に進む力」

これもこれまで書いてきたが、今回のプロジェクトは血液検査の新技術の事業化という個人的に全くの未経験分野でのプロジェクトであった。

技術的知識はもちろん、業界のプレイヤー同士の関係性、FDA(食品医薬品局、アメリカの厚労省的組織)の承認プロセス、マーケティングの定石などほぼ知識が皆無の状態からのスタートだ。

しかし半年間で一通りの結果を出すためには、英語でそれらを全て情報収集して読み込み理解する時間は無いので、必要なことだけをとりあえず学び、分からないことや知らないことに当たったらその都度情報収集したり、仮説のまま進めたりしていくしかなかった。常に「よく分からないなぁ」と思いながら進んでいくこの状況は想像以上のストレスなのだが、その状態に慣れ、大胆に仮説を置いたり、分からないことを認めてどんどん聞いていったりする胆力は鍛えられたと感じている。

 

「異なるバックグラウンドをもつチームで協力してグループダイナミクスを生む力」

最初は気づかなかったのだが、「よく分からない」のは私だけではなく他のチームメンバーも同じであり、作ろうとしているビジネスプラン全体を最初から分かっているメンバーなどいなかった。英語で、しかも未経験の分野だと自分だけが何も分かっていないように感じてしまうし、他のメンバーが言っていることはどれも正しく聞こえてしまうのだが、そんなことは無く、どのメンバーも全て分かっているということはあり得ない

それに気づいてからは、自分の意見に自信がなくてもどんどん出せるようになったし、他のメンバーが言っていることにも突っ込んだり、分からないことは他のメンバーに積極的に聞き(その結果みんな分かっていないことが分かったりもしたw)確認していったりできるようになっていった。

この変化は私だけでなく他のメンバーも同じで、半年間を通して自分たちが何を分かっていて何を分かっていないのかが徐々に明らかになってきたように感じた。

こうした「みんなよく分かっていない」中でも、グループとしてのアウトプットの質を高めていくために、その良く分からない状態を受け入れ先行きが見えづらい中でもチームの雰囲気を保つ努力を怠らず、しかし必要な指摘や議論は厭わず、その中ではお互いに持っている知識を惜しみなく躊躇なく出し合い、また時には分かっているメンバーに任せるということを半年間行動し続けてきたことは良い経験になった。

このような質の高いチーム運営をチームの一員として経験できたのは、一重にハイスペックなチームメンバーに恵まれたおかげだと思っている。

 

「事業化の中で必要になる検討事項を整理し、優先順位をつけながら取り組む力」

これはMBAで学んだハードスキルを組み合わせて使うという側面について。

事業化プロセスの中には、マーケティング、戦略、組織、ファイナンス・会計、オペレーションなどあらゆる知識が求められる。またそれぞれの分野の中では、データの収集や分析、プライシング、ビジネスモデル分析、資金調達、EXITプランなど、より細かいハードスキルが必要になる。

ただしいつもその全てについて考え続けるというよりは、事業化のフェーズに応じて考えるべき事項とその深さが異なってくる

今回はビジネスモデルが何も決まっていない状態の中、まず業界内でのお金が動く仕組みから学び始め、どのような競合に対して誰にどのようなバリューを与えるか、そこからはいくら取れるのかという戦略・マーケの側面をまず検討し、そこがある程度固まってからオペレーションとファイナンスを少しずつ考え始めた。

ここまでを先学期のうちにまとめ、事業の魅力度を一度判断したあと、今学期に入ってからはGo-to-market戦略として具体的にどのようにゼロから自分たちのシェアを取っていくかについて考えるフェーズに入った。具体的には外部の研究所との協業という目標を取り入れ、それに伴いファイナンスマーケティングなども修正を繰り返してきた。

こうした先学期から続く全ての検討プロセスを自分の手を使って動かしてくることで、ゼロからの事業化について何をどのような順序でどこまでの深さで考える必要があるかという感覚がなんとなく掴めてきた。次に自分が未経験分野で事業を作るとしても、何から手をつけて良いか迷うということは無いだろう。

 

Financial Statement Analysis

財務諸表と企業を取り巻く状況をもとに企業の課題や成功要因を分析するとともに、企業価値の測定をできるようになることを目指したクラス。

ケーススタディとレクチャーが半々ずつで、ケースやレクチャーを通してバリュエーションや利益分析、M&Aなど個別の項目について学び、グループワークでは実際の企業を1社選定し(我々は映画館運営会社のAMCを選定)その企業についてケースとレクチャーから学んだ知識を活かして財務分析を行った。

 

1年ぶりに履修したファイナンス系授業だったのだが、若干苦戦を強いられることになった。

大量のスライドを高速で解説し、ケースのレクチャーもまとまりがあるとは言い難い教授のスタイルに翻弄されたということもあるが、自分の中でまだ学んだことが体系的に整理できていない感が若干残っている。

 

ただ、企業価値評価についてケースを通して一通り学び、実際に企業価値を何度も計算した経験は少なからず自信になった

特にデュポン分析やマルチプル法、DCF法を使った企業価値評価は学期を通してのグループプロジェクトで何度も使った上、L2Mのプロジェクトの中でも使ったことで、実務の中でも自分で情報収集をして使える自信がついた。

今後新たな事業の創出や新たな市場への販路拡大などをスピーディーに遂行するためには、社内リソースの育成・活用だけでなく、社外のリソースに対して積極的に投資していくことも必要となることが予想される中、MBAの最後のタイミングでバリュエーションについて学べた意義は大きいと感じている。

 

 

Creativity & Innovation

クリエイティブ(=新しく価値があること)な思考を個人・チーム・組織で実行するためにはどうすれば良いかをケースとレクチャーによって学んだクラス。

大量のリーディングと課題は苦しかったが、11人という少人数クラスと教授のキャラクターのおかげでゼミのような雰囲気の中で積極的に参加しながら学ぶことができた。

 

学期前半は個人が発揮するクリエイティビティとして、視野を広げて選択肢と解決策を挙げるための思考プロセス知識とクリエイティビティの関係と、持っている知識の引き出し方などについて学んだ。

また後半では前半で学んだフレームワークを応用し、チームや組織でのクリエイティビティとして、集団思考に陥らないようにするための思考プロセスクリエイティビティを引き出すための組織設計などについて学んだ。

 

これまでもこの授業については多く記載してきた通り、クリティカルシンキング、リーダーシップ、組織論を繋ぐ重要な学びが詰まった素晴らしい授業であり、コアクラスにしても良いとさえ思っている。

多くのことを学んだが、一番の収穫として挙げるのであれば、組織で新しいものごとを生み出すためのリーダーとしての振る舞い方をフレームワークに当てはめて理解できたことだろう。

学期の最初から最後まで通して繰り返し使ったフレームワークである「視野を広げる・知識の幅と深さを広げる・知識を活用する・クリエイティビティを妨げる要素に気づき能動的に排除する」という基本動作をケーススタディにあてはめて何度も分析することで、様々な状況下でも自分のチームをクリエイティブにするために何をすべきかの指針を得ることができた

このフレームワークや大量のケーススタディから学んだ具体例を通して、自分のチームに何が足りないのか、どうすればもっと新しく価値があることを生み出せるのかを考え実践していける自信は少し付いたような気がするので、あとは実際のビジネスの中でそれを使い、自社のポテンシャルを引き出せるリーダーになるべく行動するのみである。