Your focus determines your reality.

思ったことや新たに知ったことのメモとして。元々は留学中に考えていたことを記したブログでした。

プロダクトプラン 反省あれこれ

最終プレゼンが3つとStrategyクラスの最終授業がある今学期の集大成的な週となった。

特にこの学校の看板授業であるLab to Marketのプレゼンは、6分と短い事もあり、本当に話さなくてはならない要素を厳選し、スライドや話し方の細部にもかなりこだわった。細部にもこだわった分グループ内の衝突も本当に多かったのだが、その分達成感も大きく学ぶものも多かった。Lab to Market自体は2年生の冬学期・春学期に実習コースが続くが、この1年生の春学期に学んだ理論が全ての軸となり、他の選択授業で学ぶ事や実践する事も全てここに結びついて来るものだと認識している。

これまで何度か記載した通り、今学期は4人グループで翻訳サービスの立案を行ってきた。結果としては、ビジネスで海外に行く人に向けた、簡単に使えて人間の翻訳者に接続されたリアルタイム翻訳デバイスを立案し、プレゼンの効果もありクラス内ではトップの評価を得ることができた。

ただ、これまでの検討過程はかなり粗いものであり、反省点も多々あるため、それをまとめておきたい。

 

課題とソリューションの特定は、もっとしつこく丁寧に

ダブルダイヤモンドは先学期のマーケティングの授業でも学び、今学期のL2Mで最初に学んだフレームワークだ。2つのひし形が並んだ形が表す通り、課題の特定とソリューションの特定についてアイディアの発散と収束をそれぞれ行い、求められている課題に対してしっかり応えるソリューションの概形を明らかにする思考プロセスで使われる。ひと昔前まではモヤモヤしたアイディアをただ収束させるじょうご型の思考プロセスが良いと考えられていたらしい。

今回のグループワークでは、このプロセスをもっと丁寧に繰り返し議論すべきであったと感じている。ビジネスプランのそもそものベースを作るものであり、かつメンバーの中で本当に解決したいという課題や自信のあるソリューションを形作る基本的な思考プロセスであったのに、ここが曖昧なものになってしまったためにスタート時点はメンバーの意識が揃わず本当に苦労した。具体的な反省点は以下の通り。

 

課題選定議論の発散の甘さ

課題の候補として挙げるものはもっと広い観点でいろいろなものに目を向け議論すべきだった。

自社で採用をやっていた時など、学生のグループワークを見ていても常々思っていたことなのだが、急いで決めた課題というのは自分の生活の視点から出ないものが多い。学生であれば教育ソリューションや家族のコミュニケーション、教科書の売買などに目が向きがちだ(実際、今学期はそうした問題を取り上げたグループも多かった)。

もちろん自分が身に染みて感じている課題感を扱うというのは重要だと思うのだが、自分から見て重要に見える事を世の中的にも大きな課題(=大きな市場)であるとして扱ってしまうことは危険だと思う

今回は母国語が違う4人のグループだったため言語の壁という点に目が向きやすく、それが挙がった時点で他の課題については思考停止してしまい、深い考察もせずに飛び込んでしまった。

 

課題の絞り込みの甘さ

言語の壁という課題に対しての考察も浅かった。

一口に「言語の壁」と言っても、色々な種類の課題が混ざっている。誰がどんな場面で感じている壁があるのかを明らかにした上で、今はまだ解決されていない、自分たちが解決すべき問題がどこにあるのかをもう少し初期段階で議論すべきであったと思う。これが深まっていなかったために、次のソリューション特定の議論では誰のどんな課題を解決するものを探すかという論点がメンバー間で噛み合わず、議論が停滞することが多かった。

 

フレームワークに沿った思考プロセスの繰り返しの浅さ

今回はとにかく、課題の発見とそれに対するソリューションの考察をスパスパと決めすぎてしまった。

個人的な感覚だが、フレームワークに沿った思考は一度行ったら終わり、というものではなく、何度も繰り返し考え直すことが不可欠だと思っている。

例えば、マーケティングの基本的な思考プロセスはセグメンテーションターゲティングポジショニング→4Pというのが定石だが、このプロセスもこの順番に1つずつ考えておしまいというわけにはいかない。4Pを考えて初めて気づくセグメンテーションの軸もあるだろうし、そうするとまた自社のポジショニングを考え直し、それに沿った4Pを考えという具合に、フレームワークを行ったり来たりすることで、全体の整合をチェックしながら思考を深めていくというプロセスを経ることができ、結果的により現実に即しており実現性の高い戦略を作れるようになるはずだ。

しかし、今回は課題検討の発散収束ソリューションの発散収束について一度通り過ぎただけで議論を終えてしまったため、その後に続くカスタマージャーニーマップやマーケティングの段階で苦労し、そこに至ってから自分たちの課題を見直すという形になってしまった。

原因としては、思い浮かんだソリューションに飛びついてしまいやすいことと、一度考えたものを壊すことに対する抵抗があることだろうと感じている。これはグループで議論しているとなおさらだろう。思いついたアイディアに対して懐疑的な目を向けDevil’s Advocateを繰り返すことでフレームワークに沿った思考を「行ったり来たり」して、アイディアを鍛え上げていくことが必要だったと思う。

 

技術的可能性について、どの段階でどこまで考慮すべきか

今回はサービスクリエーションとマーケティングが授業のトピックであったため、技術についての考慮をあまりすることができなかった。

我々が発表したサービスの核となる競争優位性の1つに、デバイスが常に翻訳者と接続されていて、ワンタッチで通訳を介した会話を始められるというものがあった。主にスマホGoogle翻訳を競合と見据えた差別化要因だったのだが、ネクタイピンサイズの端末1つだけでそれを行うことの現実味のなさをどこまで考慮するかという点でグループ内では少し議論になった。

個人的には、ユーザがすでにスマホ用に契約したインターネット回線を活用して、端末からbluetoothで飛ばした音声をアプリで変換してIP経由でコールセンターに送ってというものを考えていたのだが、6分間のプレゼンに盛り込むのが難しいということと、端末が直接繋がっている方が簡単だから技術的実現可能性は無視してそう言い切ろうという意見に負けてしまった。結果的にはそうしたシンプルさが逆に受け、クラスメイトからの評価は高かったわけだが、フィードバックの中には「本当にできるの?」という見方もあった。

本来Lab to Marketという授業はその名の通り、新たな技術をいかにサービスとしてマーケットに出すかというスキルを身につけるものであり、そのためには今回のようなマーケティングドリブンな考え方に対していかに技術的可能性を絡めていくかという検討プロセスはもっと練習したいところである。今後の授業でそうした機会を作れるように期待したいところだが、今回の授業の中でその点について教授とももっとコミュニケーションを取ればよかったというのは反省点でもある。

 

現状と理想形を具体的に掴む(既存事業の観点にとらわれない)

これは反省点というより今回新たに得た学びに近いが、カスタマージャーニーマップ、サービスブループリントツールを使った思考プロセスは絶対に省かず行うべきだと感じた。

顧客がサービスと現状どのように触れ合っているか、その過程で何を感じているかを描くカスタマージャーニーマップと、それを踏まえて顧客とサービスの関係性の理想形をマッピングしたサービスブループリントをできるだけ生々しく具体的に描くことで、サービスのさらなる改善に向けた論点や、現状サービスが抱えている問題点を洗い出すことができる

これまでの授業の中では、ハーレーダビッドソンのライダーがいかにブランドと付き合っているかという点や、自分たちでドライブスルーを利用してみて初めて感じたこと等をマッピングすることで、個々のユーザの実際のサービス利用シーンを観察して初めて見えてくる論点や課題があることを実感することができた。

ここでよくあると思っている落とし穴が、既存事業の論点やありがちな問題点を新しい事業やサービスにもそのままあてはめて満足してしまうことである。フレッツ光と光コラボでは、一見似たようなサービスであるがユーザも競合も違えばバリューチェーンもチャネルも全てが異なる。その中で、ユーザが課題を抱えてからそれをサービスで解決するまでにどのようにサービスと関わり何を感じるかは当然異なってくる。ユーザの視点をシミュレーションしたり、A/Bテスティングのようにサービスプロトタイプを通して実際にユーザテスティングを繰り返したりすることで、初めて見えてくる論点や改善の方向性などもたくさんあるはずである。

カスタマージャーニーマップやサービスブループリントというツールは、その見た目がマンガ的であり、内容も定性的なものになるため、日本企業の文化に馴染みづらいものだろうと思う。ただし未経験領域でのサービスや事業の立案における思考プロセスとしては省いてはならないものだと思うので、強い既存事業を持つ自社組織の中でどのように有効活用していくかを考えていきたい。

 

バイスとアプリについて

これは少し各論的な話だが、デバイスとアプリの競争力の違いについて。

以前もカーナビの話などについて触れてきた通りだが、個人的には柔軟性がなく開発に時間のかかるデバイスというソリューションには懐疑的であった。車に埋め込まれたカーナビというナビゲーション専用端末より、汎用的なiPhoneという端末に乗っかっているGoogle Mapというアプリの方が世のニーズに対して柔軟であり、その分競争力も強いと考えてきた。

そのため、今回のソリューションを考えるにあたってアプリにするか端末にするかという議論の中では絶対にアプリ派であったのだが、何度もディスカッションを重ねるうちに少し意見が変わってきた。

 

今回の他のグループによるサービス提案は、アプリによるソリューションが圧倒的に多かった。例えば中古教科書の売買プラットフォーム、食の好みに応じてレシピを提案するアプリ、イベント検索アプリなど。そのどれもが小さくまとまってしまっており、少ししたら似たようなアプリが出て埋もれてしまうだろうなという印象であった。これはおそらく、アイディアだけが先行しており、他社の模倣を断ち切る独自の強みが無いためだろうと考えた。アプリだけであれば、コードが書ければ同じものを作れてしまう。

例えばGoogleのように世界一かつ他社が簡単には真似できない情報量のようなリアルな強みを持っていれば良いのだが、アイディアだけが他社との差別化要因となっていると、誰でも作れるあまり魅力的では無いサービスになってしまう。例えば食の好みに応じたレシピ提案サービスであれば、小売との関係性をいち早く築いて先行者優位を取るなどの優位性構築があるだけで一気に強いサービスに見える。こうした強みが、普通のプレイヤー、特に後発者であると、アプリだけでは築きにくいのだ。

 

それに対して端末サービスは端末自体に技術的な優位性を実装しやすいため、差別化要因が分かりやすく、他社の模倣を断ち切りやすい。その点で魅力的である。他グループが発表していた例としては、サーフボードにくっつけるリーシュコードの新製品がある。紫外線を感知して色が変わることで、過度な日焼けを防ぐサポートをしてくれるというものであった。技術的な可能性や価格の問題はあるが、特許等によってコア技術を守ることや、そもそも製品の開発プロセスを考慮すると、すぐに模倣されることは少なくともアプリよりは無さそうだ。さらに、実体のある商品という点でも投資家や顧客の理解を得やすい点も魅力的であり、アイディア自体はシンプルでありながらクラスメイトの中でも好反応を得ていた。

今回我々のグループもアプリではなく、翻訳者につながっており、かつ操作がワンタッチでできるレンタル端末とした点で、アプリを中心とした他の競合とは一線を画すことができたと思っている。

 

ただし、日本のカーナビには今でも懐疑的なことに変わりはない。現在の強みはGPSの強さと地図データがあらかじめ読み込まれているくらいしか強みがないので、操作性がよくGPSも年々改善し、そのうち地図データくらいならオフラインでも使えるようになりそうなiPhoneに駆逐されても仕方ないだろう。

そうならないためには、端末ならではの魅力をもっと追求し、例えばフロントガラスに情報を直接映しだしたり、車のエンジン・ブレーキ等と接続した安全設計などを実装したりしていくことが必要だろうと思う。制度と商慣習による業界の保護だけに頼っていると、リスクが高すぎる。