プロトタイピングに向けた事前検討プロセス
New Product Developmentの事前課題はこれまでに習得したコンセプトの総演習的内容だったのだが、指示が若干曖昧だったこともあり、どのように進めるべきかかなり悩むこととなった。
結局2週間悩みグループでも相談し、最後にプレゼンを行うところで何となく自分の中では納得することができた。(プレゼンは準備不足感が否めなかったが)
これまでのコンセプトをいかに結びつけるかについて、プロトタイピングのプロセスを追って、これまでの理解をまとめておきたい。
1. マインドマップ
マインドマップは、一つのテーマを中心に書き、そこから連想されることを周りにどんどん発散させながら書いていくブレインストーミングの手法だ。
ダブルダイヤモンドのフレームワーク(課題特定とソリューション策定のための思考発散・収縮フレームワーク)における、課題特定のための思考発散手法として理解した。
今回の課題ではTransportation(輸送)と言うざっくりしたお題に対してマインドマップを描くところからスタートしたのだが、それによって自分が仮説として持っている「ユーザとTransportationがいかに関わっているか」を洗い出し、課題がありそうな場所についてブレインストーミングを行うことが出来る。
2. ユーザマップ
対象となるユーザを特定するために、ターゲットマークのようなものを描き、中心にコアターゲット、その周辺に以下の2種類のユーザ層(利用シーン)を記載していく。
「フリンジユーザ」
中心に近い方。近いニーズを持っていると想定されるユーザ
「エクストリームユーザ」
中心から遠い方。普通に考えるとターゲットには入っていないようだが、共通するニーズを持っているかもしれないユーザ
例えば今回はマインドマップに基づき、シェアリングスクーターのBIRDについて課題を考えていくことにした。そのためターゲット設定としては以下のように記載した。
コアターゲット:短距離のショッピングと通勤通学
フリンジユーザ:空港内の移動、観光、警備等
エクストリームユーザ:競技用使用、教育用利用、障害者用利用等
3. ユーザインタビュー
いわゆるエスノグラフィと言われる手法だと理解。
ユーザが実際にプロダクトを利用するところを観察し、併せてユーザにオープンクエスチョンによるインタビューを行うことで、「ユーザが既存商品とどのような付き合い方をしているか」をリサーチする。
また、この前段としてのユーザマップと合わせて、自分たちのターゲットユーザの詳細なプロフィールを掴みペルソナを描くことで、次のステップのカスタマージャーニーマップをより具体的に作成することができるようになる。
以前の記事にも記載した通り、その際注意すべき点は以下の通り。
・自分たちの持っている仮説が正しいと立証したいために、誘導的な質問になっていないかチェックする
・Yes-Noクエスチョンや曖昧な選択肢、網羅的ではない選択肢によって、ユーザが本当に意図しているわけではない回答をしてしまわないようにする
・オープンクエスチョンと”Why”クエスチョンによってユーザに自由に語らせる余地を設け、誘導的にならないようにする
・インタビュアーに対する見栄や回答への面倒臭さからユーザの意図に反した回答がされてしまわないよう、調査の進め方にも注意する
・「いつもだいたいどうしているか」などの曖昧な習慣を聞く質問では、ユーザは想像上の自分を作り上げて答えてしまうため、「ここ1週間のうち」など具体的な期間を指定し、ユーザの記憶の中から実際のユーザの行動に基づいた回答をしてもらうようにする
今回はBIRDを実際にうちの妻に使ってもらい、その後インタビューを行うことで、以下のような知見を得ることができた。
- スクーターに乗っている間にもっと情報が必要である
- 駐輪時のアプリの画面操作が直感的に行えず混乱を招いている
- アプリアイコンのデザインが他のアプリと混同しやすいデザインになっている
4. カスタマージャーニーマップ
ユーザが現在の製品を認知し、購入し、利用し、自身の問題を製品によって解決するという一連のプロセスの中で、何を考え何を感じているかを一枚のチャートにしていく。
サービスとユーザの関係を見るだけでなく、その中でのユーザの感情の移り変わりまで書き込むことで、製品改善のポイントを認知することができる。
製品の認知から含めて記載していくことで、プロダクトデザインの改善のみならず、マーケティング、営業、デリバリー、製造、プライシングまで含めて網羅的な課題認識が可能になる。
今回の課題の中ではまずユーザに扮したグループメンバーが実際に製品(BIRD)を使う所を製品の認識フェーズから含めてビデオに撮影し、その上でグループメンバーが感じた不満を盛り込んだカスタマージャーニーマップを作成した。
次に、改善されたカスタマージャーニーマップとして、現状の不満が解決された状態での理想的なカスタマージャーニーマップを作成することで、製品にどのような改善が必要なのかを考えるというプロセスを踏んだ。
個人的にはこのビデオを使うという手法はかなり有効だと感じている。
先学期のDigital Product Managementでusertesting.comを使ってA/B testingを行なった際にも、作成した二つのプロトタイプをテストユーザに使ってもらいながら、何を感じたかを喋り続けてもらい、それをビデオに撮影したものを見ながら改善案を考えるという演習を行なった。
このビデオはまさにそのままカスタマージャーニーマップになっており、ユーザがどこで製品に使いづらさを感じるか等をリアルに知ることができる。
5. サービスブループリント
ユーザが製品を使うプロセスに沿って、サービスのフロントエンドとバックヤードがそれぞれどのような機能を果たしているかを詳細に記載したフローチャート。
次の5階層で記載するのが一般的なようだ。
Physical Evidence(物理的痕跡)
サービスとユーザとの間に発生する、サービスの物理的な痕跡。BIRDの例では、ユーザ登録確認のメールや、アプリ上に表示されるレシートなど。
User Actions(ユーザの行動)
その名の通り、ユーザがサービスに対して起こす行動をそのまま記載する。
BIRDでは、QRコードをスキャンする、スクーターに乗るなど。
Front-of-Stage interactions(フロントエンドの動き)
ユーザから見えるサービスの反応。
BIRDでは、画面に地図を表示する、スクーターのロックが外れるなど。
Back-of-Stage interactions(バックヤードの動き)
ユーザから見えない部分でのサービスの動き。
BIRDでは、GPSでユーザの位置を特定する、データベースにユーザを登録するなど。
Support Process(サポートプロセス)
ユーザとサービスの直接のやりとりの外でサービス全体の流れを支える要素。
BIRDでは、スクーターを充電する、クレーム対応をするなど。
サービスブループリントを作成することで、理想的なカスタマージャーニーマップの実現に向けてサービスがどのような要素を持っているべきか、それらがお互いどのように関連すればユーザの求めるサービスを実現することができるのかを把握する。
サービスブループリントを作り終えた段階で、
・ターゲットにしているユーザの具体的なプロフィール
・ユーザとサービスがどのように関わっているか
・サービスの全体像
・その中でユーザエクスペリエンス向上に向けて改善ポイント
が明らかになっていれば、プロトタイプを作るための検討材料が揃ってきていると言える。
そこから先は、実際に改善案を形(=プロトタイプ)にしていき、ユーザに見せ、批評を受けてまた作り…というプロセスの繰り返しとなる。
その中ではここまでのプロセスで作ったチャート等を見返し、自分たちがここまで立てた仮説が間違っていないか、作っているプロトタイプが検証したい仮説から外れていないかを逐一確かめながら進んでいくことが必要になる。