Your focus determines your reality.

思ったことや新たに知ったことのメモとして。元々は留学中に考えていたことを記したブログでした。

大企業の中での新規事業

火曜日に提出したOrganizational Strategyのケースは、大企業の中での新規事業創出について。まさに自分がここに来る理由となったテーマについて、Nike(失敗例)とGE(成功例)2社のケースを通して学ぶというものであった。

 

2つのケースの比較

Nike 中国市場への進出について

中国の中所得者層のスポーツブームに乗り参入したNikeであったが、これまでと価格帯を大きく変え、商慣習や流通網の常識が違う中国に参入する中でも、既存の評価指標や小売とのネットワークに頼ってしまったため、戦略を実行するための組織がうまく構築出来ないまま地元のメーカーに負けてしまう。

(中国のクラスメイトに個人的に聞くと、その後は高価格帯へのシフトとチャネル戦略の再構築によってNikeはリベンジを果たしたらしい)

 

GE ヘルスケア産業への参入について

中国市場における低価格帯のコンパクトな超音波診断器を題材としたもので、ケース自体は本来「リバースイノベーション」(新興国市場での成功を先進国市場に「逆輸入」するという事業開発手法)について書かれたものであるが、今回はそれを新事業における組織行動にフォーカスして使っている。GENikeとは逆に、新事業に合わせて新たな組織を作り、成功を収める。その内容は以下のようなものが含まれる。

 

プロに任せる

中国市場とヘルスケアビジネスのプロフェッショナルに判断を委ねる

 

組織とルールの刷新

全ての組織デザイン、物事の進め方を中国市場での新規事業立ち上げという目的に沿うよう新たに作る

 -採用
 -レポートライン
 -役職
 -業務内容
 -基本動作のモデル
 -機能間のパワーバランス

 

プロジェクトの位置付け

プロジェクトを役員直下の組織におき、そのプロジェクトのリソースがプロジェクトに集中できるよう守る。

 

ゼロベースで考えさせる

これまでの事業で不要としていたものも、中国での新規事業に役立つと判断したらそのまま進める。

 

管理指標の変更

数字を追うのではなく、効果的な仮説検証をいかに行うかにフォーカスする。

 

リーダーは何をすべきか

まさに自分がこれまで考えてきたことと同じことが議論の的になっており純粋に嬉しかった。このクラスでは組織デザインに特化して分析したためにリーダーの果たすべき役割が特に色濃く感じられた。例えば、制度やルール、組織構造を新しく作り直したり、プロジェクトの意義を示してリソースを守ったりすることはまさにリーダーが行うべきことだろう。

この時にベースとなるのは当然そのプロジェクトにかける熱量であり、周りの批判や反対に対して自分のプロジェクトの意義をしっかりと伝え、必要なリソースを確保し続けることが不可欠だ。

 

GENikeの一番の違いはここに現れていると個人的には思っている。

GEのリーダーは既存事業のマネージャーたちからの批判に晒されながらも中国市場や小型超音波診断器の持つインパクトを説明しきって説得を繰り返した。

それに対してNikeのリーダーはこれを欠いてしまい、小売事業者に対して既存のアプローチしか取らなかったために、自分たちがターゲットとして描いたはずの顧客層にアクセスすることができずに負けてしまった。

 

また、リーダーの熱量には自信という裏付けが必要であり、それを支えているのは自分のチームにいるプロフェッショナルたちとの信頼関係と、彼らに任せてやらせてみるというマネジメントの仕方だろうと思う。

2つのケースを読み、新しいことを始める時にまず認識しなくてはならないのは、自分たちは何も知らないということと、これまでと同じように一生懸命考えれば成功できるという思い込みを捨てることだと感じた。

新たな市場やビジネスの中で、何がこれまでと異なり、何を変えなければならないのかを知らないのは当たり前のことだが、それを理解する前に既存のやり方を当てはめてしまおうとすることは現場レベルだとかなり多いとこれまで感じてきた。GEはそれに対して、現地でプロフェッショナルたちを採用し、彼らの研究やマーケティングに裁量を与えることで、中国ヘルスケア市場でのやり方に組織を適応させて最終的な成功をつかむことができた。

 

これから自分の仕事で新たな分野に飛び込んで行くときには、いかにしてその道のプロをチームに引き込み(採用以外に社外とのリレーション構築も含めて)、彼らに裁量を与えるかが勝敗を分ける大きな要素になると考えている。

その際に、これまでやってきたことと新たに始めることの違いを理解するためのフレームワークこそが、マーケティングやアカウンティング、戦略論などのテクニック的な部分であり、それらの汎用的なフレームワークを組み合わせて使えることがリーダーの強い武器になることは間違いないだろう。