Your focus determines your reality.

思ったことや新たに知ったことのメモとして。元々は留学中に考えていたことを記したブログでした。

フレームワーク「OODA」

お世話になった上司の方から、PDCAに変わってイノベーション創出のための意思決定フレームワークとして最近話題となっている「OODA」についてどう思うかという問いかけを頂き、議論する機会があった。その議論の中ではこれまでMBAで学んだことやその過程で考えたことを反芻することとなった。組織やリーダーシップについての良い復習になったので、考えをまとめておきたい。

 

OODAってなに?

そもそもOODAはObserve(みる)/Orient(わかる)/Decide(きめる)/Act(行動する)の頭文字からなる行動決定のフレームワークであり、元々は空軍のリーダーが戦闘中に意思決定をするためのフレームワークだ。組織の意思決定を早めるためにPDCAに取って代わり得るフレームワークとして、最近ちらほら聞くようになってきた。


確かにPDCAというフレームワークは、1/4の力をプランニングに割いて、そのプランを忠実に実行して、最後に「何故プラン通りに行かなかったのか?」と振り返るフレームワークなので、イノベーション創出には当てはまりづらい。

MBAでも「PDCA」というと成熟した業界やある程度将来の見通しが効くプレイヤーが経営戦略を考える、いわば長期的な戦略のためのフレームワークとして扱われていることが多いように思う。

 

一方で、新規事業創出など見通しの利きにくいものに使われてるフレームワークはどれも「走りながら考える」ようなものばかりだ。

早々に市場に出て行って、ユーザにプロトタイプを見せながらどんどん軌道修正を繰り返して開発を進めていくやり方、手書きイラストで作ったアプリ画面を見せながらユーザにフィードバックをもらってどんどんブラッシュアップしていくやり方など…その中には当然長期の見通しなど無く、ユーザがどれくらいいるのかとか金はどこから持ってくるのかとか、そう言うものも全て走りながら考えていくというのが実態だろう。「アジャイル開発」「リーンスタートアップ」と言ったバズワードも全部OODAの亜種みたいなものだと考えている。


OODAはPDCA的に考えればPがなくいきなり突っ込んでいくフレームワークのように見えるのだが、実際にはちゃんと市場とやりとりしていることが長い目で見ればリスクヘッジになっていて、重厚長大な計画が大きくずっこけるような事が避けられる。

逆に言えば、見通しの利かないイノベーション創出のプロセスでは、最初にコケながらでも歩を進めておく事で、素早くて市場から見てもリアリティのある事業開発ができるのだろう。

 

どうしたら会社はOODA的に動けるのか

ただ、既存組織にそれを根付かせると言うのはまた1つの課題であろう。それは日本を出てくるときに感じていた最も大きな課題感でもあった。

まず、OODAというものはもともとマネージャーの意思決定フレームワークなので、プレイヤーに意識させるものではないはずだ。それよりは、プレイヤーにアジャイルな行動と軌道修正が自由にできるようなルールとか空気をマネージャーが出して、結果的にOODAになるようなチームを作ることが重要になってくるだろう。

OODAはいいフレームワークなのだが、それを最初に持ち込もうとすると大抵の会社ではそのフレームワークに縛られてDまでたどり着けないのではないかと思う。日本の会社員はいい意味でも悪い意味でもカシコい人が多く、フレームワークを与えると考え込んでしまい逆効果だろう。(「O」「O」「D」「A」と書かれた4つの四角にビッシリ文字が書いてある資料とか作り始めそうである)

それより、OODA的なプレイヤーの動きが可能になるように、リーダーたちはリスクを取れる環境を用意してあげたり、プランを立てて承認をもらうよりどんどんユーザの前に出て行ってフィードバックを集めて、それをその日にプロトタイプの修正実行に結びつけ、翌日新たなものをお客さんに持っていくという行動が普通であるという空気を作ってあげることが必要なのだろうと思う。

 

個人的にも、以前の仕事でトライアンドエラーを繰り返していた時はこの状態に近かったと思う。地場の企業と協業してなんとかして新しい商売を作れないか、そしてそのために誰と何をどうしたら良いのか誰も分からない中で、いろいろな企業に声をかけてみて、時にはお金も持ち出してたくさんの実証実験ができたのは、当時の上司たちがそれを許す環境を与えてくれていたからだろうと思う。

当時はたまたまそうした考え方ができるリーダーたちに恵まれたために、「とにかくやってみてダメなら仕方ない」という取り組みをパートナー企業たちと広げ、一定の成果を得ることができた。

しかし、これをもっと組織としてできるようになるには、どのマネージャーもそのように行動するためのインセンティブが必要になってくる。つまり、リスクを取りに行くマネージャー(とできればプレイヤーにも)にお金を付けられるような給与体系を実現することが必要だと思っている。いきなりは難しいが、例えば組合員ではないマネージャー以上だけでもそう言う給与体系に変えるなど、どこかにメスを入れていかないと何も変わらない。

企業は、既存事業を安定的に、効率的に運営するために組織やルールを作っており、そして既存事業が大きければ大きいほど、そして会社がしっかりしているほどそれらの枠組みもキチンとしたものになっている。そもそも、その同じ枠組みの中でイノベーションを起こそうと言うのはかなり無理がある。本気でイノベーション創出を進めたければ、人事も組織も評価も承認プロセスも全部セットで変えていくことが必要だろう。