Your focus determines your reality.

思ったことや新たに知ったことのメモとして。元々は留学中に考えていたことを記したブログでした。

狙いを絞るということ

今週のマーケティングの授業はセグメンテーションとターゲティング、ポジショニング、いわゆる「STP」について。

.5時間の授業のメッセージは至ってシンプルで、「ユーザが持っているニーズのうち、自分たちの持っている強みを使って、どのニーズを満たすことで競合と差別化するかを明確にすること」

これができていないと、そのあと価格やプロモーション、チャネル展開などもっと細かく事業の戦術を立てようとしても、何に向かって戦術を立てれば良いかがはっきりしていないので、戦術がお互いに噛み合わないガタガタなものになってしまったり、誰に何を訴求しているのかよく分からない「誰も欲しがらない」サービスや商品になってしまったりする。

 

自分もかつての業務の中で同じような失敗をした

経営企画部で中期戦略の仕事をしていた際、あるサービスの戦略を主管部と一緒に考える仕事があった。いわゆる回収代行サービスで、当社が提携するサイトでネットショッピングしたサービスなどの支払いを当社サービスの料金支払いとまとめて支払えるというサービス。競合はクレジットカードや電子マネーなど他の支払い手段全てであり、後発として参入するこのサービスをどう展開していくかを考えていた。

消費者から見た支払いサービスのキモは、どれくらい多くの場所でそれが利用できるかだ。増してや決済サービスとしては後発であり、いきなり全くの新しい生活様式として大量普及させていくような市場状況でもない。最初から「どこでも使えます!」なんて状態にすることはできないので、コアターゲットを定めて突破口を見出すことが必要だと考えた。つまり、特定のユーザの特定の支払いについてはうちのサービスが強いという状態をまず作り、そこから徐々に広げていくべきということだ。

そこで早速、考えうる参入チャンスや潜在顧客の案などをいくつかまとめて上司と議論したがどれだけ資料を作って議論を重ねても、一向に合意することができなかった。

上司の言い分は「なんで潜在顧客を自分から切り捨てて顧客の幅を狭めるようなことをするんだ。できるだけ多くの人に当たっていく方が良いに決まってるだろう。」というもので、結果的に使える場所もターゲットもとにかく幅広く色んな人に当たってみようというままで走っていくことになってしまった。その後やはり利用者数が広がらず、案件としてははっきり言って失敗に終わってしまった。

 

この話から言えること

1. ターゲティングの重要性について

うちの会社は、これまで大量普及を前提とした新技術先行のサービスを業界のトップランナーとして売ってきた。しかしそれとは違い、今後の新規事業は後発として入っていくことが多いだろう。

そんな中で作るべきはこれまでのサービスのように誰にでも好かれる「丸い人」的サービスではなく、すでにある競合サービスとははっきりと一味違う(=ポジショニングのはっきりした)サービスであるはずだ。これまでのマーケティングとしてはそれでよかったのかもしれないが、既存サービスとは業界参入のタイミングや競合の存在など外部環境が違うことを認識し、それに合ったやり方を導入していかなければ誰にも刺さらない。

2. ターゲティングを組織として実行することについて

いくらマーケティングの知識を学び、勝ちパターンを覚え、良い戦略を考えることができるようになったとしても、それをチームメンバーが納得してチームとして一緒に動けるようにならないと意味がない

戦略は一人では実行できない。

それを組織として実行するには、何を切り捨て、何はやらなくて良いのかの意思決定が必要なのだが、それをボトムアップしていくのはかなり難しい。もちろん判断材料をボトムアップすることは必要だが、最終的には組織の上からトップダウンの形で「やらなくて良いこと」を決めて戦略を絞り込んでいくことが必要だ。

内外の経営環境を見渡し、切り捨てるべきことを定めることによって道筋を示していく、これぞリーダーがすべきことではないかと思う。

 

少し前の話だけど、巷の成功事例を1つ

千葉のいすみ鉄道は、車窓からの景色を見ながら千葉の美味しい料理とワインが楽しめるプランなど、いろいろなローカル鉄道の「コンテンツ」を企画して好評を博している。社長の鳥塚氏は、元々外資の航空会社に長年勤務していたが、鉄道好きが高じ、いすみ鉄道が社長を公募していたのを見つけて転職してきたという経歴の持ち主である。そんな鳥塚氏が、2013年に自身のブログで団塊の世代は大きなマーケットだが、相手にしていない。他の会社へどうぞ」と明言している。

 

彼らが団塊の世代をターゲットにしない理由は3つ。

1. 窓口で職員に相談しながら申込するのを好むなど、「手がかかる」顧客だから

2. ブランド志向の世代であり、安く良いものを提供するいすみ鉄道の哲学を理解してくれないから

3. 今は大きいマーケットだが数年するといなくなる、開拓の必要がないマーケットだから

まさに外部環境と自分のリソースや強みを理解した上でターゲットを絞り込んでいる好事例だと思う。

いすみ鉄道のツアー企画は、インターネットのみで申込受付をしており、団塊の世代からは「なんて不親切な会社なんだろう」と言われるが、社長自ら「うちのお客様にはならない方が良いですよ」と公言している。表現の仕方は賛否あるかもしれないがw、自分のコア顧客が誰かを明確にすることが、刺さる人には強烈に刺さる強いサービスを産むのではないかと思う。