Your focus determines your reality.

思ったことや新たに知ったことのメモとして。元々は留学中に考えていたことを記したブログでした。

オープンイノベーション

木曜日のTechnology and Innovation Strategyはオープンイノベーションについて。

 

社外のパートナーや顧客とのネットワークを活用し、自社だけではなく他者の力も借りて新製品や新事業の開発を薦めるという手法だ。日本でも数年前からバズワードとなっており、各企業が率先してオープンイノベーションを起こすためのアクセラレータープログラムや顧客を巻き込んだ開発プログラムを立ち上げている。

授業の中では、大人のユーザをアンバサダー制度によって製品開発プログラムに組み込んだレゴ社のケーススタディをスタート地点として、オープンイノベーションをうまく起こすのに必要となる要素を実務レベルで見ていくこととなった。

 

授業の中で取り上げられた、オープンイノベーションのために必要な5つの基本的要素は以下の通り。

 

1. 効果的なネットワークの構築

まずはアイディアを出し合うネットワークの構築がなければオープンイノベーションは始まらない。レゴ社がアンバサダー制度として顧客を招き、プログラマ建築士など、社内にはいないプロフェッショナルと新しい事業開発を進めたように、全く違った分野のプロフェッショナルたちと同じ目的に向かってアイディアを出し合うことが第一歩となる。

 

2. アイディア発掘役とアイディア連携役の育成

社外のネットワークを広げ、アイディアを拾ってくるアンテナのような役割を果たす人と、それらのアイディアをつなげ、実際に事業の形にしていくハブのような役割を果たす人が必要である。

 

3. 時間とリソースの配分

アンテナ・ハブとなる人のマネジメントについて。アンテナ役には、社外に出て行ってネットワーク構築をする時間を与え、いかに有効なネットワークを形成したかを評価すること。ハブ役については、アンテナ役が拾ってきたアイディアやネットワーク同士を組み合わせ、いかに新しいものを生み出したかを評価すること。

 

4. 正しいモチベーション管理

これはオープンイノベーションに限らず新規事業開発の全てに当てはまるが、早期の意味ある失敗と、長期的な成功を評価基準とすることが重要。

もちろん全ての失敗を評価対象にするのではなく、リスクをとった失敗と、そこから長期的成功につながる何を学び取ったかを評価の対象にすること。

 

5. ユーザフレンドリなプロセスの構築

巻き込む対象である社外のプレイヤーに対しては、自社が何を目指し、何ができるのか/できないのか、社外プレイヤーに期待することは何かを明らかにすることで、社外プレイヤーのアイディアをコントロールすることで、効率的なイノベーションプロセスの運営がしやすくなる。

レゴ社はオープンイノベーション専用のソーシャルメディアプラットフォームを作り、アンバサダーユーザとのコミュニケーションを円滑にしたことが成功要因の一つだと捉えている。

 

今回の3時間の授業ではそこまでディスカッションが深まらなかった(いつも思う、この授業の惜しいところ)のだが、巷に溢れる「オープンイノベーション」に対して自分なりのオープンイノベーション像を考える良い入り口にはなったと思う。

外からアイディアを募るのは良いが、あくまでイノベーションを起こすのは自社である、ということが基本的な姿勢として必要だ。イノベーションを起こしそうなアイディアを見つけてきて、それに対して自社が乗っかるというのはオープンイノベーションではないだろう。

それよりも、自社がどんなイノベーションを起こしたいのかを明確にし、それを周囲のプレイヤーにしっかりと理解してもらった上で、相手の専門知識を借りて自社の事業開発や製品開発を加速させるという態度で臨むことが重要だと思う。

教授が繰り返していた「最も重要なことは『そもそもレゴとは何か」を考えることだ。どんなイノベーションが次に必要になるのか?」という問いが印象的であった。

 

自社も10年以上前から社外プレイヤーと協力して新たな事業を起こそうとしているが、その根底には自分たちがどんなイノベーションを起こすべきなのかというポリシーのようなものが必要である。それがなければ、こちらのリソースだけ良いように使われて、こちらには何も残らない(=儲からない)提携で終わってしまう。

今であれば、中小企業向け営業の提案材料を増やすことに専念した製品開発なのか、全くの新しい自社事業を立ち上げるための事業開発なのか、そしてその中でもどのような顧客の課題を解決するためのものなのかなどを明らかにした上で、他社の力を借りることが必要だと思う。