Your focus determines your reality.

思ったことや新たに知ったことのメモとして。元々は留学中に考えていたことを記したブログでした。

新ビジネス創出の際の業界理解

水曜日のLab to MarketL2M)では、新生児向けの血液検査新手法のビジネス化に取り組んでいる。

これまでに競合調査、自社の強みの明確化、患者・医師のニーズの調査などを行ってきたのだが、先週のアドバイザとの面談を通して、取り組みの重点が「保険会社のニーズをつかむこと」に変わってきている。

アドバイザとは、教授がプロジェクトの内容に沿ったプロフェッショナルを各プロジェクトのアドバイザとして割り当ててくれたもので、我々のプロジェクトには地場で血液検査会社を営むナイスガイ、Darrelがアサインされている。Darrelとの面談では我々の持っている技術についてと、患者や医師に与えるメリットについて説明をしたのだが、それは全て以下の言葉で一蹴された。

「保険会社のメリットは?君たちのサービスに金を払うのは誰だ?保険会社にメリットが無ければどれだけ優れた技術でもビジネスにはならない」

後から聞けばおっしゃる通りなのだが、検査を受ける患者とその家族、そして検査を施す医師のことばかりに意識が集中してしまっていたことは確かであり、情けない限りである。

ヘルスケアサービスは、何かを誰かに売るという単純なビジネスとは異なり、色々なプレイヤーが関連する。検査を受ける人、検査内容を決定する人、検査の実施を承認する人(患者の家族など)、検査を承認しお金を払う人等々。

ビジネスモデルを考えるにあたっては、何よりまず直接の顧客である「お金を払う人」のニーズを満たすことが最も重要であるのに、表面的な構造にとらわれ、そこに目が行っていなかった。我々のサービスである血液検査に対してお金を払うのは保険会社であり、彼らこそ我々の顧客であるのだから、そのニーズこそ我々が最も満たすべきものであるのは明らかだ。

 

アメリカの保険制度は実はかなり複雑で、アメリカ人でもその内容やカバレッジがどのように決まるかなどを理解している人は少ない。ということで、まずは医師や保険会社のツテを辿って、保険会社がどのように保険カバレッジの内容を決めているかの情報を急ぎ集めることとなった。

私も、妻が毎週ボランティアしているクリニックで医師にインタビューをさせてもらった。その結果、以下のようなことが明らかになった。

・血液検査含む検査費用は、基本的に保険会社が負担

・保険がカバーするかどうかは、症状に応じた適切な検査をまとめたいわゆる「プロトコル」に載っているかどうかが勝負FDAや学会、医療関連団体の認定により作られるもので、プロトコル上「必要な検査」として認められた検査は保険会社もカバーせざるを得ない

・加えて、従来の検査より安価な検査に対しては保険会社は積極的

こうしたことが明らかになったことで、「価格水準を明らかにすること、FDAの承認を得ることで、保険会社にカバーしてもらう」ということが我々の直近のマイルストーンとなった。

 

新規事業を起こす=新しい市場に入り込む際には、当然のことながらその業界のプレイヤーがどのように関連しているのか、誰がどのような役割を担っているのか(お金を払う人、サービスを使う人、意思決定する人等々)を明らかにすることが出発点となる。

競合に対する技術的な優位性を見つけるのも、「誰にとっての価値か」がわかっていなければ意味がない。超基本的なことを痛感させられた週になってしまった。