Your focus determines your reality.

思ったことや新たに知ったことのメモとして。元々は留学中に考えていたことを記したブログでした。

2018冬学期振り返り

2018冬学期も終了となり、1週間の春休みに入った。

今学期は前学期と比較してペーパー試験が少ない代わりに、大量のケースリーディングとライティングに追われ、結果的には前学期よりも一つひとつのケースについて深く考える機会が多かった。そしてその分、フレームワークを実践の中でいかに使うかという思考回路も鍛えることができ、ハードな分だけ得るものも多かったと感じている。

また、今学期までは全ての科目がコア科目であり、今後選択科目でより専門的な内容を学んで行くに当たって自分の興味がMBA全体のどこにあるのかを見通すための「目次」のような色合いも強かったと感じている。以下、各科目についての振り返り。

 

Marketing

非常にオーソドックスなMBAの授業であり、マーケティングの基礎的なフレームワークを学び、ケーススタディを通してそれらがどう機能しているかを広く浅く理解することができた。C、4Pをどのように実践の中で組み合わせて使うかということや、それらのフレームワークの各要素について何を押さえるべきかについては理解できた。

一方で、ふわっとしか理解できていないプライシングとカスタマーリレーションについては選択科目の中でもう一度学びたい。

・プライシング

秋学期にManagerial Economicsで学んだ数学的な解決の仕方をベースとして、競合の状況や商品のライフサイクルや特質、顧客に与える影響など、考慮するポイントが非常に多岐にわたり、まだまだ自分の中での判断基準が育ったとは言いがたい。授業の中では衛星ラジオのプライシングケースを扱ったものの、これまでの経験の延長上で色々な提案を出来てしまったため、もう少し様々な条件の中での値付けを考える練習を積みたい。

・カスタマーリレーション

スターバックスがいかに顧客満足度を形成して行くべきかなどのケースを通して学ぶことができたものの、まだ顧客満足を形成する要素としてどのようなものがあり、それらを形成するための手段にどのようなものがあるかということや、長期的な顧客満足がどのように顧客のローヤリティに結びつくかなどをさらに深く学びたい。

特に、ターゲティングの考え方にも結びつくのだと思うが、「どの顧客は相手にしないべきか」というある意味での「切り捨てる」判断をうまく出来るようになりたいと感じた。個人的には、選択肢を絞り込むという考え方は自分の会社にはあまり根付いていないように思える。こうした判断を勇気を持って出来るようになるために、その裏付けとなる知識と経験をもっと蓄えたい。

 

Organizational Strategy

企業が実現したいと考えていること、という広義での戦略を正しく実行するために、人や制度、文化なども含めて組織がどのように整備されるべきかを学んだ授業。MBAによくある「Organizational Behavior」に近いが、それに加えて戦略との整合や、組織を変える中でリーダーが果たすべき役割というミクロな視点もカバーした内容であり、教授の授業運営はかなりメチャクチャ(議論が発散して終わり、という印象も)な時もあったが、個人的にはかなり満足した授業であった。

また、Radyの授業らしく、新規事業や事業内容の変革に際しての組織の変革にもかなりフォーカスしており、それらの考え方を自分のこれまでの経験に当てはめて考え、それに対して教授からもフィードバックをもらえたりと、その点でも満足度は高かった。

最も印象に残っているのはやはりGENikeのケースを通して学んだ、新規事業においては過去の成功体験を捨て、新たな市場やサービス、戦略に整合した新たな組織を作るべきである、という自分がこれまで考えてきたことを学問的に捉えて考え直すことができた点だろう。組織を変えると一言に言っても、何をどの程度変えるべきか、そのステップはどのようにあるべきかなどをフレームワークを通してより深く考えることができた点は、これまでのMBAの中では最も実践的な学びであった。

この授業によって大枠としての変革の骨組みのようなものを理解できたので、今後選択授業でより細かく学んで行く内容はその骨組みのどこで使うべきものかをマッピングするようにして行きたい。

 

Finance

今期最も苦戦し、理解度も最も低いと感じている科目。

上にも記載したが、企業金融部分についての手法の理解と実践が浅いままになってしまった。ファイナンスについて、特に金融商品やプロジェクトのキャッシュベースでの評価の仕方や基礎的な理論がどのように使われているかについては一定程度理解できたことで、一旦個人的には満足なのだが、今後MAについてだけはどこかで学びたいと考えており(新規事業や外部環境の変化に対応するための手段として)、デューデリジェンスを考えるにあたっては金融の知識が必須になってくると考えている。その時にはまた苦手意識を持たず学び直したい。

 

Operation

今学期最も興味を惹かれた科目であり、内容の理解もかなりしっかりできたと実感している。何年もこの授業を担当している名物講師である教授の授業運営も最高に上手く、身の回りの事象からビジネスケースまで大小様々な事象をオペレーション的フレームワークに当てはめて解説してくれるおかげで「お勉強」に終始しない実践的な学びを得ることができた。

特に、ボラティリティのある需要に対してのリスクを最小限に抑える行動を数学的に考えることが出来るようになった点が最大の収穫であったと思う。上記Marketingのところにも記載した通り、リスクを評価しリスクを取るという行為は、自分の会社があまり得意としない「何を切り捨てるべきか」の判断であり、それに向けてリスクを認識して比較し、落とし所を見つけるという経験をアカデミックな観点から積めたことは大きな経験であった。

またその中では、前学期に学んだQuantitative Analysisでの統計的アプローチも応用することができ、これまでに積み上げてきている基礎的な知識どうしを組合わせて使うという感覚も養うことができた。

さらに、この授業の中で2度扱った工場シミュレーションLittlefieldを通して、グループオーガナイズや自分のリーダーシップを発揮するためにチームに対して働きかけることを学ぶことができたことも大きな収穫であった。今学期前半は各自がもともと持っている得意分野を生かして分業的に課題をこなして行くという淡々とした雰囲気のグループであったのだが、得意ではないものの自分が面白さを感じているこのシミュレーションについて、積極的にグループに働きかけ、失敗をしながらも最後までリーダーシップを獲り続けるという経験を通し、グループメンバーの積極性を引き出し、グループを有機的に結びつけることができたと感じている。

またその中では、メンバーのフォロワーシップに学びを得ることができたり、一度失敗してしまった局面からもう一度グループのモチベーションを引き出すために自分ができることを考え実践することができたりと、MBAというリスクフリーなコミュニティの中での練習を通してこそできる経験も多く積むことができた。

 

春学期に向けて

 

来期以降選択科目が入ってくることになるのだが、無数に選択肢のあるMBAの中で何を学び、何は学ばないかについて少し考えてみた。

・ハンズオンプロジェクトや具体的なケースでのアウトプットにこだわる

MBAが他のプログラムと違うことは、知識のインプットと並行してアウトプットの機会がたくさんある点だろう。その機会を実践にできるだけ近い点で活かす事にこだわりたい。特に、マーケティング関連のフレームワークは抽象的であり関連する要素も膨大であり、場数の多さがあってこそ発揮できるスキルだと感じている。今後の授業選択の中では、実企業とのプロジェクトや、一つひとつのビジネスケースの中でのフレームワークを使ったアウトプットをどれだけ多くできるかという点を一つの基準として持っていきたい。

 

・個人としてのコミュニケーションスキルは学ばない

アメリカのビジネススクールは、アメリカで働くことを前提としている場合が多く、個人どうしの交渉スキルやプレゼンスキル、上司・部下とのコミュニケーションスキルについてはアメリカでのビジネス常識に大きく偏っていることが多い。

Radyもその例に漏れず、特に組織内でどのようにパワーを発揮するかなどのコミュニケーションスキルについてはアメリカ的なフランクな人間関係を前提にしていることが多いと感じている。また、個人的な交渉スキルについても、英語力によるところがかなり大きくなってしまうことは事実であり、その点ではインターナショナルの学生は期待した通りの学びを得ることが難しい場面も多い。

将来的にグローバルな環境の中でパワーを発揮していくということを見据えて学ぶことも良いのだが、まずは自社の国内組織の中で地に足がついたリーダーとして成功することが無くてはそのチャンスも回ってこないだろう。そのための基礎的なフレームワークはこれまでのLeadershipOrganizational Strategyで学ぶことができたし、そして今後も続くであろう大量のグループワークや帰国後の実務の中でもスキルアップが可能であると考え、これ以上MBAの中ではそれに時間を割かない事にしたい。