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思ったことや新たに知ったことのメモとして。元々は留学中に考えていたことを記したブログでした。

旧世代技術覇者の新技術への対応

木曜日のTech and Innovation Strategyは先週に引き続きSカーブへの対応について。

今週はKodakを例にとり、旧世代の技術で成功した企業はなぜ新しい技術への対応が遅れがちなのかを学ぶという内容。

 

Kodakの悲劇

Kodakフィルムカメラで覇権を取り、写真に収めるべき決定的瞬間を意味する「コダック・モーメント」という言葉ができるほど、カメラメーカーの王者となった。

しかし、その後押し寄せたデジタルカメラへの対応が遅れ、それまでに築き上げた「安いカメラを売り、フィルムの販売で利益を稼ぐ」というビジネスモデルが崩壊、経営破綻にまで追い込まれるという、典型的な破壊的イノベーションの犠牲者になってしまった。その後「コダック・モーメント」という言葉はSカーブの新旧世代交代が起こる瞬間を表す言葉に意味が変わっていったという悲惨なエピソードもある。

この新旧世代交代、旧世代で活躍した企業ほど新たな技術へ対応するのが難しい(「Handicap of Success」)と言われている。既存技術で繁栄を謳歌している企業や、少なくとも大きな収益を得ている企業は、次世代技術が自分たちにとってどのようなリスクになり得るのかを理解しておくことが不可欠だろう。

 

Handicap of Success

このHandicap of Successは次のような要素が挙げられる。どれも聞いてみれば当然のことであるのだが、だからこそ意識的にここから脱することが重要となってくると思っている。

 

・既存のSカーブに囚われる(既存顧客の声を聞きすぎてしまう)

・既存技術にコアコンピタンスが依存してしまう

・コスト構造が既存技術を前提にしたものとなっている

経営管理理念が既存技術に結びついている

・リソースの割り当てが既存技術に大きく傾注している

 

既存の技術で成功している企業は、その製品に多くのリソースを割き、組織や経営管理の仕方、コスト構造、ヒトモノカネのリソース割当に到るまで、その製品に最適化していく。最適化しているからこそ現状の成功を勝ち得ているとも言えるのである意味では当然のことだ。

 

しかし、新たな技術による破壊的イノベーションが沸き起こってきた際、新しい技術に対応するために過去の作ってきたやり方をそのまま使っているのでは、新しい技術に最適化したプレイヤーに勝つことはできない

Kodakはまさに、

・これまでに築き上げたフィルムで稼ぐビジネスモデルに最適化した経営管理と開発組織をそのまま維持し続けたこと

フィルムカメラにほとんど全振りしていたリソースのデジタルカメラへの移行が遅れたこと

フィルムカメラユーザの声を聞きすぎ、既存Sカーブに留まり続けたこと

などにより、デジタルカメラの波に乗り遅れることとなった。

これはまさに既存技術の成功が足かせになった典型的な例であり、破壊的イノベーションが持続的イノベーションとは全く異なる対応が必要となるものであることがわかる好例である。

 

一方、富士フイルムは…

一方、同じようにフィルムカメラの覇者として君臨していた富士フイルムは、早々とフィルムカメラの危機を察知すると、自社の持っているコアコンピタンスである技術、例えば、フィルムの原料であるコラーゲンに強いこと、フィルムの劣化を防ぐ抗酸化技術がアンチエイジングに応用できることなどに目をつけ、それらを転用できる化粧品事業に早々と事業転換を図り生き延びた。

その中ではこれまでフィルム開発で活躍したエンジニアに大学院で新たな技術を学ばせたり、人員削減を行ったりして組織を化粧品メーカーに作り変えていく行程を踏んでいる。

 

既存技術の覇者に求められることは?

既存技術の覇者は、次の技術トレンドを積極的に察知するだけではなく、それがどのように自分たちの今の主力製品を「破壊」するのかを掴み先んじて破壊的イノベーションを自ら起こしていくことが求められると感じる。

もちろんその際には自分たちが今持っているリソースや組織、経営管理手法とは離れ、新しい組織とルールの中で新しい事業構築に取り組むことが必須だ(教授が授業の中で最も強調していたポイントがここ)。

持続的イノベーションを起こすためのチームと破壊的イノベーションを起こすためのチームはそもそも目指すものが違うのだから、そのための最適化の内容も異なってくる。